相続土地国庫帰属制度を利用できるのか~森林の場合~

相続土地国庫帰属制度とは

この度は野口真守行政書士事務所のHPをご覧いただきありがとうございます。当所は都心部の大阪市内では珍しい農地・森林、相続土地国庫帰属制度専門の行政書士事務所です。ご相談は、北は岩手県から南は鹿児島県まで20府県の実績があります。特に最近は、農地や森林だけでなく相続土地国庫帰属制度のご相談など多岐に渡ります。こちらのページでは、当所が手掛けた事例や農地・森林、国庫帰属に関する法令などをご紹介いたします。農地や森林、そのほか不要な土地でお困りの方は、ご参照いただければ幸いです。

今回ご紹介するのは、相続した「森林」は相続土地国庫帰属制度を利用できるのか

当所へのご相談で農地の次に多い土地が「森林」です。理由として「森林」は、日本国土における割合が約68.2%で、約2,577万haにのぼるためご相談が多く、また相続後「森林」をどうしたらよいかわからないのも理由であると思われます。そこで今回は、今後も相談件数の増加が予想される「森林」について、確認していきたいと思います。

それではまず「相続土地国庫帰属制度」について詳しくご紹介します。


○要件を満たし負担金を納付すれば相続した土地を国へ帰属できる。

『相続土地国庫帰属制度』とは、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律等による制度で、相続した不要な土地を、一定の要件を満たし、負担金を納付することにより国に帰属できる制度です。この制度は令和5年4月より開始され、間もなく3年が経つ制度です。

法務省HP「相続土地国庫帰属制度」 こちら

これまで国や自治体、民間などへの寄附は、引取手側の裁量により限られていましたが、この制度では、要件を満たし、負担金等を納付すれば国に帰属させることができるため、寄附よりも手離れしやすくなったのが特徴です。

また相続放棄をせず、一旦相続してから制度を利用しますので、すべての財産を放棄しなくてもよくなるため、他の財産を相続することができます。

そのほか特徴として、相続時期は問われませんので、登記記録上所有原因が相続の場合、その土地は制度を利用することができます。そのため遺言書作成前にこの制度を利用することにより相続人の相続税や固定資産税など、負担軽減に繋げることもできます。

次に、”相続した森林は、どのような森林なのか”から進めていきたいと思います。


相続した森林は、どのような森林なのか

○森林は、大きく分けて2種類ある。

まず「森林」についてご紹介致します。

森林は大きく分けて2種類あり、分け方は登記地目によります。一つは登記地目が「山林」、もう一つは「保安林」となっている森林です。

「山林」とは、その名のとおり山に立木などの森林がある土地で、主伐や間伐を行う際、届出を提出すれば立木の伐採をおこなうことができます。

もう一方の「保安林」とは、”水源かん養”や”土砂流出、土砂崩壊防備”、”除雪、なだれ防止”など、17種類の保安林に指定された森林のことです。これら「保安林」は、「山林」と異なり、立木を伐採するには許可が必要になります。「保安林」の特徴として、指定されると固定資産税は免税されます。

「相続土地国庫帰属制度」においては「山林」は対象土地とされますが、「保安林」については、指定目的によって制度要件にあたる可能性が考えられるため注意が必要です。

森林には、上記2種類があり、相続人は相続した森林がどちらにあたるかを確認します。


○森林売買には、ご注意。

近年、さまざまな「森林」の問題が浮かび上がってきています。

『森林』をさまざまな事業者が購入し、都市開発事業や太陽光発電事業、バイオマス事業などがあり、多くの企業は、しっかりと手続の手順を踏み、自治体などへ何度も確認をおこない、住民説明会を開催し、地域住民から理解されたうえでおこなっています。

しかし近年は、違法または虚偽による伐採や開発行為をおこなったりしている企業が報道されています。また、外国企業による森林売買も問題視されています。そのため森林売買は、仲介業者をはじめ、買主などが購入した「森林」をどのように活用するのかをしっかり確認することが重要です。

なぜなら、

最終的に被害を被るのは地域住民であって、熱海の土砂災害のように人命にかかわる場合があります。

それでは、そのままずっと『森林』を所有し続けなければならないのかと思われると思いますが、『相続土地国庫帰属制度』は、まさにそのような相続人のためにできた制度になります。そのため『森林』を相続された相続人の方には一度、この制度利用の検討を勧めております。

※ご注意:相続土地国庫帰属制度を使った詐欺などの増加が予想されますので、お問合せは必ず専門家(弁護士、司法書士、行政書士)へおこなうようにして下さい。

それでは次に”森林は、相続土地国庫帰属制度を利用できるか”についてご紹介いたします。


森林は、相続土地国庫帰属制度を利用できるか

○一定の要件を満たし負担金を納付すれば利用できます。

続いて「森林」の、相続土地国庫帰属制度の利用についてです。

「相続土地国庫帰属制度」は、森林であっても一定の要件を満たして負担金を納付すれば他の土地と同様、国へ帰属させることができます。但し、「森林」ならではの注意点があります。

まず1つ目が”「森林」の所在地と境界点の確認”です。

「森林」の場合、土地が広大なため、所在地や境界を確認するのが難しいと考えられます。その理由として、相続土地国庫帰属制度において、4つの土地区分の種目の中で帰属件数が最も少ないのがその理由と考えられます。ただし、対象土地が「別荘地」の場合は、所在地や境界は比較的判断しやすいため、申請はしやすいと考えられます。

「森林」は、土地が広大なため、その形状や境界を確認することができるかがポイントです。


2つ目が”森林経営管理制度を利用しているか”です。

令和元年に、「森林経営管理制度」が施行されました。これによって自治体による森林の経営管理ができるようになりました。地域にとっては森林を経営管理されるためよい話しではあるのですが、相続土地国庫帰属制度においては、対象土地が森林経営経営管理権が設定されるため、要件を満たさなくなってしまい申請することができない可能性があります。そのため「森林」にどのような権利設定がされているか確認が必要です。なお、経営管理権は登記記録には記載されないため注意が必要です。

なお、個人的な意見ですが、「経営管理権」が設定されている森林については、既に経営管理人が存するため過分な費用又は労力は要しないと思われるため制度の利用又は、市町村などの基礎自治体への寄附ができるようにすべきと考えます。

森林経営管理権が設定されている場合は。、制度を利用することができない可能性があります。


3つ目は”政令で定める崖があるか”です。

「森林」に多いと思われますが、政令で定めた基準の崖がある場合で、かつその崖を管理するのに費用がかかる場合、この制度を利用することができない可能性があります。因みに崖の基準ですが、”勾配30度以上+高さ5メートル以上”に該当する崖とされています。

ただし森林の場合は、広大な面積である場合も考えられ、その一部の崖だけをもって基準に該当、要件にあたるとして制度利用ができないと判断するのは疑問が残ります。そのため崖が存する場合は事前に”法務局への相談”で確認するようにします。

”法務局への相談”について詳しくは、当所HP”法務局への相談” こちら

勾配30度以上+高さ5メートル以上に該当する崖があり、通常の管理に当たり過分な費用又は労力を要する場合、この制度を利用することはできません。ただし、広大な面積の場合は、要相談。


4つ目は”災害の危険性”です。

『相続土地国庫帰属制度』の申請要件の考え方の一つとして、国へ帰属させた後、国が管理費用を負担しなければならないかどうかが重要になります。国としては、帰属した後に管理費用がかかるのはできる限り避けたいという考えがあるため、申請要件の多くに管理費用が発生するのかが記載されています。

特に森林に関しては、自然災害の可能性が他の土地に比べて高いため、特に注意が必要です。そのため、どのような根拠で管理費用がかからないかを考えておく方がよいかもしれません。

対象土地を管理するのに過分な費用又は労力が必要であるか確認する。。

それでは次に”『森林』を放置するリスク”についてご紹介いたします。


「森林」を放置するリスク

○不法投棄による周辺への影響や、数次相続など

次に「森林」を放置するリスクについてです。

どうしても土地が遠方にあったり、行ったこともなかったりすると、土地を放置しがちです。特に森林は、林道などの道が塞がれ対象土地へ侵入できない場合もあります。なお、土地を放置することにより負担やリスクは増していきます。

まず1つ目が”不法投棄や土砂などによる周辺への影響”です。

相続人の中には、その「森林」へ行ったことも見たこともない場合があり、当所で現地調査を行った結果、全く異なる所在地である場合も多々あります。そのため、産業廃棄物などが不法投棄される可能性があります。不法投棄された物の管理責任は土地所有者にあるため、その物を処分する費用が発生する場合もあります。

また近年では、熱海のような人災による土砂災害が発生しております。「土砂」を不法投棄されてしまうと、それは人災となってしまう可能性もあり、そうなってしまうと多額な損害賠償責任を負う可能性があります。そのため森林は特に注意が必要です。

また近年は、自然災害や害獣被害についても考えなければなりません。相続人が相続した森林がどういった所在に立地しているのか、ハザードマップなどを確認する必要があります。この確認を怠ってしまうと、所有のリスクが高まる可能性があります。


2つ目が”固定資産税、相続税の負担”です。

森林も含めた不動産は、固定資産税を納付しなければなりません。その金額はその土地や建物により異なりますが森林の場合、比較的低額であることが多く、また「保安林」の場合、非課税となるため、所有していること自体気づいていない場合もあるため、「森林」は放置されがちです。

しかし10年20年と所有する限り永遠に払い続けなければなりません。また相続が発生した場合、相続税も納付しなければならず、相続が続く限り続きます。


3つ目は”数次相続による共有”です。

不動産の相続でできるだけしない方がよいのは、共有にすることです。一見、共有はそれぞれの持分を均等にできるのでよいように思われますが所有者が増えてしまうと、その分、自由がきかなくなります。例えば土地売買やこの制度を利用する場合、所有者全員の同意が必要となるためです。

そのため相続不動産はできるだけ単独所有にする方がよいとされています。

但し、単独所有にさせるためには生前対策が特に重要です。ご相談でよくあるのが、これまで相続登記などを放ったらかしにしていたため数次相続が発生している場合です。この場合に単独所有するためには、相続人全員の同意が必要となるため、相当の手間や時間、費用がかかってしまいます。

そのため固定資産税などが安価であっても放置せず、共有者が増加する前に対策をするのが理想です。

※因みに、令和6年より『相続登記の義務化』が開始します。 

詳しくは、法務省HP こちら


最後に

以上が”相続土地国庫帰属制度を利用できるのか~森林の場合~”でした。

相続土地国庫帰属制度における土地区分の種目の中で帰属件数が最も少ないのは「森林」ですが、当所で、最も譲受人をみつけ出し、寄附ができたのは「森林」です。

譲受人をみつけ出すことができたのは、所在地の確認をはじめ相続土地国庫帰属制度における現地調査などが起因しています。

そのため不要な土地を処分したいのであれば、「できるだけ、早く動くこと。」が重要と考えています。

相続土地国庫帰属制度において、申請件数の約1/4にあたる「取下げ」には、隣地所有者や関係者への譲渡しのための取下げも含まれています。国へ帰属させることだけを目的とするのではなく、如何にその土地を活用できるようにするか、活用できそうな人物は誰なのかを考えることが重要かもしれません。

『相続土地国庫帰属制度』の利用について詳しくは、当所ページ こちら

最後になりますが、不動産は所有し続ける限り、子の世代、孫の世代と、永遠にその負担やリスクは続いていきます。このような負担やリスクを後世へ引き継がせないためにも『相続土地国庫帰属制度』の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

今回は以上になります。最後までご覧いただきありがとうございました。