令和5年、最初の投稿となります。本年もどうぞよろしくお願い致します。
皆さん。ご無沙汰しております。大阪市で農地・森林専門の行政書士をしております野口真守です。
昨年は、年始に目標を書いておりましたが、全く目標を達成できませんでした。そのため本年は、昨年のことを反省し、目標は心の中に閉まったまま、前へ向かって進みたいと思います。
それでは、令和5年最初の投稿についてです。本年最初ということもあり、よくある農地相続について今回は書きたいと思います。近年、TVや新聞、ラジオなどでも、相続相談のCMが増えてきました。それだけ社会的に関心が高まり、案件も増えていると思います。
そんな相続の中でも、農地の相続は特殊な相続財産です。
なぜなら農地は、他の不動産と異なり、権利の移転や地目変更をおこなう場合、市町村等への許可や届出が必要となります。許可や届出がされていない場合、不動産登記ができなかったり、売買契約等による権利が発生しないなどの弊害が起きる場合があります。特に許可なく農地転用をした場合、最悪、原状回復命令が出る場合もあります。
農地の規制は、あくまで農地を守るためのものなので致し方ないのですが、しかし、場合によっては農地所有者やその相続人の負担となる場合もあります。また現代と一昔前とでは、環境や社会情勢、生活習慣などが変化しているため、農地法についても、もう少し柔軟であってもよいのではと考えたりもします。
話しが少し逸れましたが、言いたかったのは農地はそれだけ厄介であるということです。そして、この厄介な農地は相続のときも、その相続時期や譲受人が誰なのかなどにより、手続が変わります。
そのため、今回はどういったことにより手続きがどのように変わるのかをご紹介したいと思います。事前に知っておくことにより、相続方法のヒントにしていただければ幸いです。
それでは早速、『承継の時期により、許可が必要になる場合がある。』からはじめた
承継の時期により、許可が必要になる場合がある。
〇生前贈与の場合は、農地法の3条許可が必要。
まず一般的な相続の場合、農地法の相続届出をおこなうことにより農地の権利を承継することができます。また届出の場合、許可とは異なり相続人がその農地を耕作したり管理したりする能力がなかったとしても、手続上、おこなうことができます。
しかし、相続税の節税や生前の財産贈与などを考えて、農地を生前贈与した場合、第三者への権利移転と同じ農地法の3条許可が必要となります。これは、法定相続人でもそれ以外でも誰でも同じです。
農地法の3条許可手続は、届出に比べ手間がかかる上、要件があります。例えば法定相続人等の耕作能力や同一市町村在住であるかなどの要件が必要となります。そのため農地を耕作できない相続人が相続する場合、一般的な農地法の相続届出でおこなうのが無難かもしれません。
法定相続人以外の場合、原則、許可が必要。
〇特に、孫などの親族への遺贈方法は注意が必要。
相続案件でよくあるのが、法定相続以外の相続人への贈与をする場合です。
例えば、法定相続人以外の親族である孫に贈与をする場合などが考えられます。孫に贈与をするためには遺言書作成が必要なため、被相続人は遺言書を作成し、孫へ遺贈をおこなう場合が多々あります。これは、ほかの財産(金銭や農地以外の不動産など)の場合でも一般的におこなわれており、通常であれば問題はありません。しかし、農地に限っては異なります。
農地の場合、法定相続人以外への遺贈は農地法の3条許可が必要となり、この許可を受けることができず、相続できない場合があります。実際にこのような話しをいくつか聞いたことがありますので、法定相続人以外の者への遺贈を行う場合は注意が必要です。もちろん、その受遺者が耕作できる場合、農地法の3条許可を受けることにより農地を承継できますので、耕作できるかどうかの確認をしてみてもよいかもしれません。
また法定相続人以外の場合でも、包括遺贈(相続財産全てを相続する)の場合、農地法の3条許可は不要といわれています。そのため、法定相続人以外へ農地を遺贈する場合、包括遺贈も一つの方法かもしれません。ただし、相続の届出は必要ですのでご注意下さい。
相続の届出と3条許可は、登記等、手続の順番が変わる。
〇農地法の3条許可は、不動産登記前に行う必要がある。
最後に細かい話しですが、農地法の3条許可と相続届出、この二つの手続の違いをご紹介します。
農地法の3条許可について、あくまで『許可』となりますので、所有権等を移転する前に許可を受けなければなりません。許可を受けずに農地の権利移転登記はできません。そのため農地の売買契約をする場合、許可を受けることを特約とする契約書を作成する場合が多いのはそのためです。
反対に農地法の相続届出について、相続の場合、所有権移転原因が相続であるため先に不動産登記をおこないます。そして相続による不動産登記が完了したのちに相続届出をおこないます。
このように、農地法の3条許可、相続届出では手続きの順番が異なります。このほか農地法の4条許可、5条許可や追認的4条許可、非農地証明願などの農地に関する行政手続も、不動産登記をする前に許可等を受けなければなりませんので、不動産登記より前におこなわなければなりません。
そのほかの注意点
〇受付締切日と総会について
最後に、これも細かいことですが農地法の3条許可などの許可等についての標準期間についてです。
農地法の各許可等について、一般的に農業委員会等の機関が審査をおこない、許可が出されます。その手続期間によって許可等を受けることができる時期が変わりますので注意が必要です。
一般的には、毎月○○日受付締切日として、その翌月○○日に総会が開かれ、そこで各許可等の審査がなされる場合が多いです。そのため各許可等は、いくら要件を満たしていてもすぐに許可を受けることができないのが一般的です。そのほか許可内容により審査期間も異なります。そのため農地に関する各許可等については、余裕をもって申請することをお勧めしております。
また農地相続に関して、相続届出以外にも組合などの確認も必要となります。それはまた別の機会に書きたいと思います。
最後に
今回は以上となります。
農地に関する相続方法について、知らずに遺言書などを作成してしまうと結局、相続人等が困ってしまう場合があります。そのため遺言書を作成する前に一度、法定相続人は誰か、どのように相続させるかを考えてみてはいかがでしょうか。
今年もどうぞよろしくお願い致します。