こんにちは、行政書士の野口です。今回は詐欺被害の増加傾向にある新『原野商法』について、紹介したいと思います。『原野』や『山林』を所有している方は、詐欺の手口は巧妙ですので特に気をつけていただきければと思います。
それではまず『原野商法』についてです。
『原野商法』とは
まず、はじめに『原野商法』についてです。
『原野商法』とは、1990年代・バブル期に起こった土地の『原野』を利用した詐欺のことです。『原野』とは、不動産登記地目の一つで、簡単にいうと人の手により耕作されていない土地で、山林でもない、雑草が生い茂っているような土地のことです。『原野』は、ほとんど価値のない土地なのですがバブル期のころは、山林や原野でのゴルフ場やリゾート地開発が頻繁に行われていました。
そこに目を付けた詐欺師たちは『原野』や『山林』をゴルフ場やリゾート開発が行われるように装い、本来1万円もしないような『原野』や『山林』をその何百倍の金額で売買されていたといわれています。当時はバブル期であり、先行投資を行う人たちが多く、今では考えられないような不動産売買がおこなわれていました。また有名人を使った広告宣伝等もおこなっていたケースもあり信じる方も多かったようです。
結果として、土地開発は行われず現在も『原野』や『山林』の状態がほとんどです。上記でも書きましたが『原野』にはほとんど利用価値がなく、購入したいという人はほぼいません。また、国や自治体へ寄付をしたくてもほとんどの場合、引き取ってもくれません。それほど『原野』の市場価値はないのです。
そしてこのような『原野』を相続した相続人は、固定資産税等を納め続けなければなりません。本当に恐ろしい詐欺事件です。そして令和の現在にもこの『原野』を利用した詐欺事件が発生・増加しています。
新『原野商法』の手口とは
上記の『原野商法』は、詐欺師が『原野』を「売る」という商法でした。
しかし新『原野商法』は、これまでとは反対に詐欺師が『原野』を「買いたい」という商法になります。
『原野』を相続した相続人や相続人に負担をかけたくない被相続人などは、負担しかない『原野』を早く手放したいと考えています。そこに目を付けた詐欺師は、相続人などに『原野』を「買いたい」と話を持ち掛けるそうです。多くの相続人は喜んで『原野』を売ろうと詐欺師の話にのってしまいます。
売買のためと、嘘の手続き費用や税金対策といった名目で金銭を請求し、実際には『原野』の売却と同時に新たな『原野』等の土地購入を契約させる『売却勧誘・下取り型』と呼ばれる手口が発生しているのです。
このような詐欺事件の被害者の多くは高齢者が多く被害も更に深刻化しているため、独立行政法人国民生活センターでも注意喚起を行っています。
新『原野商法』増加の可能性について
新『原野商法』は上記のように新たな手口で2016年ごろから詐欺被害は増加しています。
独立行政法法人国民生活センターより
より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル-原野や山林などの買い取り話には耳を貸さない!契約しない!-(発表情報)_国民生活センター (kokusen.go.jp)
あくまで私見ですが、この新『原野商法』は更に増加すると考えています。その理由として『相続による登記の義務化』があります。
これまでの相続登記の任意から義務化されることにより、放置されていた『原野』や更に『山林』などの所有者が明確になるため詐欺のターゲットとなりやすく、また『原野』や『山林』の負担を早く手放したいという相続人の心理により「売って下さい!」という甘い言葉にのりやすくなってしまうところがあります。
実際にインターネットにはさまざまな売買情報が多くあり、十分に注意する必要があります。(ちゃんと事業をおこなっているところがほとんどだと思いますが。)
原野商法の対策について
最初にも書きましたが『原野』や『山林』などを「売って下さい!」は、ほぼありません。
そのため『原野商法』の対策として『話があったら誰かに相談する。』というのがよいと思います。
ご家族や知人のほか『国民生活センター』や当所など専門のところへご相談するのもよいと思います。まずはご自身のみで考え、行うのはやめておくことをお勧め致します。
ただし、中には本当に「売ってほしい!」という人がいる場合もゼロとはいえません。そのため本当にその人が買いたいのか確認する方法として、なぜその『原野』を買いたいのか『目的・理由』をしっかり聞くことが重要です。どういった理由で、なぜその『原野』が必要なのかという話の筋道が確かであり、売主の方が納得できる目的・理由であればご検討されてもよいかもしれません。
ただしその際も、契約書や手続き費用の請求等は必ず当所のような専門家等に確認することをお勧め致します。(※『原野』や『山林』は立地や現況等により行政手続き等が必要な場合があるため。)
そのほか、所有の『原野』や『山林』の立地や状態によって、自治体等から連絡がある場合もありますのでそういった場合も十分に確認して下さい。
最後に
今回は以上となります。
新『原野商法』ということでご紹介致しましたが『相続登記の義務化』等、関係法令の改正により所有者の明確化がされることによる弊害の発生はこれから増加することを考える必要があります。
どのような手口があるのか、我々士業もそのことを認識しなければなりません。日々勉強ですね。
また『原野』や『山林』等の処分・管理でお困りな方がいらっしゃいましたら、当所へお気軽にご相談下さい。その立地や現況の確認はもちろん活用方法などご支援させていただきます。
詳しくは【相続した土地でお困りの方】『相続土地国庫帰属制度』こちらをご覧下さい。
最後までご覧いただきありがとうございました。