こんにちは。行政書士の野口です。
今回は、農地価値と農地転用についてご紹介します。
農地はその場所により、使用目的の範囲や価値が変わります。所有農地がどのような場所にあり、どのような目的使用ができるかを把握することにより、その農地の価値を知ることができます。今回は農地転用も含め、おおまかな農地価値の考え方について書きたいと思います。
それではまず、農地の固定資産税からです。

農地の固定資産税について
農地は宅地と比べ固定資産税が安い。
農地の固定資産税は一般的に『一般農地』と『市街化区域農地』の2つに区分されそれぞれ評価・課税されます。
『一般農地』は『農地評価』となり『一般農地の負担調整措置』が講じられます。課税は、おおよそ千円/10a程度となります。
『市街化区域農地』は更に2つに区分されます。①『農地評価』を受けた場合、おおよそ数千円/10a 程度となります。
反対に②『宅地並評価』を受けた場合、おおよそ 数万円~数十万円/10aの課税となります。『市街化区域農地』は、『農地評価』と『宅地並評価』により約10倍~100倍の課税が変わる場合があります。そのため、どちらの評価にされているのかを確認することが特に重要です。
以上により『農地評価』を受けた農地の固定資産税は優遇されていることがわかります。
※こちらで紹介した固定資産税は一般的な固定資産税についてです。個別具体的な固定資産税に関しては税理士へご相談下さい。
農地の価値とは
農地から宅地へ転用するとおおよそ4倍に!?
上記のとおり『農地評価』をされている農地は固定資産税に関してかなり優遇されています。そのため農地の価値も比例し宅地に比べて安くなります。
しかし、農地は一般的にその使用目的により価値が変わります。
①耕作目的と②宅地・転用目的の場合です。
②宅地・転用目的は、①耕作目的のおおよそ4倍(全国平均)の価格となるといわれています。
これは、農地を宅地・転用すると、住宅などの建物を建てることができ使用目的が増えるため、土地の価値が高くなります。
そのため ①耕作目的 から ②宅地・転用目的 へ転用する場合、その時期を検討しなければなりません。
また②宅地・転用目的は、『都市計画法』による市街区域や市街化調整区域等、『農業振興地域の整備に関する法律』等により宅地へ転用できる地域とできない地域もあり、確認・注意が必要です。
農地を宅地・転用にする時期
農地相続時期は特に注意。
上記のとおり農地の価値は耕作目的と宅地・転用目的で大きく変わります。そのため耕作目的として所有していても宅地・転用が可能であればその価値は潜在的に高く、そして『農地評価』を受けていれば、固定資産税の負担を抑えることができます。
この特徴は農地承継の際、節税に有効と思われます。なぜなら『農地評価』の状態で承継すれば、農地価値は低く抑えられ、税の負担を抑えることができるからです。
例えば宅地・転用予定の農地を相続する場合。相続前に宅地・転用すると『宅地評価』となり、相続財産の価値は上がり相続税も上がる可能性があります。
反対に相続後に宅地・転用するのであれば、相続時は『農地評価』のため相続財産の価値を抑えることができ、相続税も相続前に比べ下げる可能性があります。 この方法は贈与の際も同様に贈与税を抑えることができると思われます。
以上により農地承継等する場合、宅地・転用時期を検討する必要があります。
詳しくはお近くの税理士へ相談されるのがよいでしょう。
農地に係る相続税等納税猶予制度
農業経営を継続する場合利用可能。
『農地に係る相続税等納税猶予制度』とは、相続人が農業経営を継続する場合、相続した農地の価値を『農業投資価格』とみなし、その価格を超えた部分の相続税を猶予する制度です。
相続税等は原則、全額一括払いのため、現金が用意できない場合などに有効な制度です。
ただし、この制度は農業を継続することが要件となり宅地・転用する場合は利用できません。そのため、農業を継続することを求められるため注意が必要です。
この制度は相続のほか、贈与の場合も利用できますので生前贈与も可能です。
農地の転用緩和について
農地の使用目的は規制緩和傾向にある。
先日、農林水産省は農業の収益向上のため、農作物の加工や販売施設のための農地転用要件緩和や手続きの簡素化の検討をはじめました。早ければ2021年度中に結論を出し、関係法令も改正するそうです。
これにより農地の使用目的の範囲は広がり、農業の雇用拡大や農地の有効活用にもつながると期待しています。
近年、農林水産省は農地の耕作目的以外の使用緩和を進めています。これはいわゆる『6次産業化』によるものと考えられ、①生産 ②加工 ③販売・サービスを生産地で一括化・ワンストップで行うことにより生産者の収益アップにつなげるためであります。またSDGsのように持続可能な産業として農業を発展させたいという考えもあると思います。 そのため、農地は今後も規制緩和傾向にあり、耕作使用以外も検討できるようになっていくと考えています。
最後に
以上、農地価値と農地転用についてご紹介しました。農地はその場所により使用目的の範囲、価値を事前に知っておくことにより、売買や賃貸などの際に役に立つと思います。また今回の内容は一般的なものですので、地域等により異なることもあると思いますので十分ご確認の上、ご検討下さい。
今回は以上です。ありがとうございました。