農地中間管理事業の活用について(農地所有者のメリットと農業の新規参入)

みなさんこんにちは。行政書士の野口です。

今回は、農地を上手く活用する方法の一つ

『農地中間管理事業』についてご紹介します。

市街地は対象区域外なので、市街地の方にははあまり知られていない事業だと思いますが

活用の仕方によって非常に有効な事業ですので農地有効活用するため検討してもらえればと思います。

農地中間管理事業とは

まず、農地中間管理事業についてご紹介します。

この事業の目的を簡単に説明すると

『耕作される農用地の集団化』と『農業経営に参入する者へ農用地利用の促進』の

2つの目的がメインの事業となります。

要するに耕作農用地をまとめ、そのまとめた農用地を農業経営する者に利用させるという事業です。

これは有効耕作農地の放置を防止すること、そして農地を耕作し続けることに繋がり、農地所有者や、隣接する農地所有者にとって農地を活用することができ、また農業をしたい新規就農者にとっては農業に参入しやすくなる事業なのです。

そして、この事業を行っているのは『農地中間管理機構』と呼ばれる機関です。

農地中間管理機構の役割

『農地中間管理機構』とは

都道府県知事が指定し、一定の基準に適合した一般社団法人又は一般財団法人のことで

各都道府県に1つに限り農地中間管理機構として指定される機関のことです。

平成26年に全国47の都道府県に設置されましたが、農地の多い地域では知名度はあると思いますが、大阪在住である私自身の周辺の知人や他の先生方にはあまり周知されておらず、市街地ではまだ認知度が低いように思います。しかし、市街地にも農地所有者や農地推定相続人が多数存在すると思われますので、これからの利用に期待しています。

それでは役割についてご紹介します。

一言でいえば、

農地を安心して貸したり、借りたりするため、農地中間管理機構が間に入るというのが主な役割です。

通常農地を貸したり借りたりする場合、当事者間で契約し、農業委員会から許可もらって成立します。

この場合、何か問題が発生した時、当事者間で解決しなければなりません。

例えば貸し手は、借り手がちゃんと耕作してくれる人や法人ならよいのですが、中には耕作をしなかったり、借り手が亡くなってしまい、そのまま放置されたりなど、貸し手が不安になる場合があります。

反対に借り手も、農地所有者が亡くなり、農地相続人から急に農地を利用するから返してほしいとか、農地共有者の同意を得ずに契約してしまったことにより問題となる場合などがあります。

こういった問題を防ぐため、農地中間管理機構が貸し手、借り手の間に入り問題が発生しないようにしまた、農地を円滑に貸したり、借りたりできるようにしています。

具体的には次の手順によります。(耕作者(借り手)が見つかった時)

①農地所有者(貸し手)と農地中間管理機構の間で農地貸借契約を結ぶ。

②農地中間管理機構と農地耕作者(借り手)の間で農地貸借契約を結ぶ。

この2つの契約により

貸し手、借り手の間に中間管理機構を入れることになり、安心して農地の貸し借りができるのです。

不動産業界でいえば、『サブリース(転貸)』のようなものと考えればわかりやすいと思います。

この契約には次のメリットがあります。

①農地中間管理機構を利用した場合、農業委員会への許可申請等は不要。

②貸し手は、借り手が耕作できなくなった場合や耕作人が亡くなった場合等、農地中間管理機構が新たな耕作人を探してくれる。

③また②の場合で、貸し手が賃貸借契約であった場合、耕作人が不在であっても賃料は支払われる。

④借り手は、農地中間管理機構が事前に現況などを調べた上で農地を借りるため、耕作しやすい。

⑤借り手が使用貸借の場合で、農地所有者が死亡し相続人が農地を所有したとしても契約期間中は使用し続けることができる。

⑥税金面での優遇がある場合がある。

(※各都道府県の農地中間管理機構により異なる場合があります。ご注意下さい。)

など、農地中間管理機構を利用して貸借する場合、貸し手・借り手ともにメリットが多くあります。

そのため農地を貸したい場合、借りたい場合は農地中間管理機構を利用することをお勧めしています。

農地中間管理機構を利用する際の注意点

これまで、農地中間管理事業のメリットを紹介してきましたが

利用する際の注意点もあります。例えば以下の内容になります。

  • 市街化区域は対象外。
  • 農地の売買はほとんど行っていない。
  • 農地の状態や所在により、必ず利用できるわけではない。
  • 権利が設定されている農地は対象外。
  • 毎年、報告が必要。
  • 使用貸借(無料)の場合も多い。
  • 都道府県により異なる。

上記以外にも、注意点はあると思いますので、利用する際は各都道府県で確認が必要です。

農地中間管理事業を有効に活用しよう!

以上、農地中間管理事業をご紹介致しました。

私自身の意見ですが、市街地に在住していて農地を相続等により所有することになった方にとっては

非常に有効な活用方法だと思います。

農地の売買はなかなか買い手を見つけることが難しいのでとりあえず農地中間管理機構を利用して

農地を貸すことを考えてみるのも一つの方法だと思います。

ただし、農地の中には耕作不能地や不耕作地など農地中間管理機構でも対象とならない農地もありますので事前の現況確認が必要な場合もあります。

当所へご相談いただければ農地現況調査をはじめ、農地中間管理機構との調整も致しております。

お気軽にご相談いただければと思います。

少し宣伝となりましたが、今回は以上です。

ありがとうございました。