都市計画法と土地基本法とこれからの土地利用(土地基本法6条改正)

こんにちは。行政書士の野口です。

今回は、土地利用方法を規制する『都市計画法』と土地利用について重きを置く『土地基本法』とこれからの土地利用について書きたいと思います。

『都市計画法』は不動産を取り扱う業者にとっては馴染みがある法律と思います。

反対に『土地基本法』はこれまであまり耳にする機会が少ないような法律かもしれません。

しかし、今回『土地基本法』改正により、これからの土地利用の方法が変わるかもしれません。

そのあたりを簡単にご紹介したいと思います。

では、まず『都市計画法』についてご紹介します。

都市計画法の目的とその背景

まず『都市計画法』の目的は

都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。(都市計画法1条)

要するに、都市を整備するにあたり、計画し、制限するという法律といったところです。

この法律ができた背景は高度成長期の頃に各地で都市化、市街化が進んだことによると考えられています。

戦前から戦後、国民の多くが農家だった時代から、高度成長時代へ移りました。

これにより農家の長男は家を引き継ぎ、次男等は市街地へ進出していきます。

それにより市街地の人口は増え、土地価格は高騰。

そのため市街地で住宅を探すのは困難になり供給不足等が発生します。

住宅を確保するためと割安な住宅が求められた結果、市街地周辺に住宅が建てられ市街化の拡大が進みます。 そして周辺の農地等が住宅(宅地)へ転用され農地の減少していったといわれています。

土地利用の無法を抑制するため、1968年(昭和43年)『都市計画法』が創設されました。

これは農地等の保護、市街化拡大を抑制するためいわゆる『線引き』という

『市街化区域』と『市街化調整区域』ができ、市街化を抑制しました。

この法律は現在も引き継がれ、土地・不動産を取り扱う際に確認が必要な法律の一つです。

土地基本法の目的と改正

『都市計画法』は一般によく知られている土地に関する法律ですが

それ以外にも土地に関する法律があります。

それが『土地基本法』といわれる法律です。

この法律は1989年(平成元年)創設された法律で、目的は

この法律は、土地についての基本理念を定め、並びに土地所有者等、国、地方公共団体、事業者及び国民の土地についての基本理念に係る責務を明らかにするとともに、土地に関する施策の基本となる事項を定めることにより、土地が有する効用の十分な発揮、現在及び将来における地域の良好な環境の確保並びに災害予防、災害応急対策、災害復旧及び災害からの復興に資する適正な土地の利用及び管理並びにこれらを促進するための土地の取引の円滑化及び適正な地価の形成に関する施策を総合的に推進し、もって地域の活性化及び安全で持続可能な社会の形成を図り、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。(土地基本法1条)

『都市計画法』よりも抽象的な目的ですが、要は土地をみだりに利用しないというところでしょうか。

いうならば、『みんなで協調して土地を利用しましょう!』というのが分かりやすいかもしれません。

この法律が創設された1980年代後半、都市部は人口増加により地価高騰が進み、地方の土地も地価高騰が期待され、投機目的の土地の転売が行われていました。投機売買が目的のため、土地をどうするかも考えず売買が行われていました。 

土地の不要な高騰を抑制するため、できたのが『土地基本法』といわれています。

しかし、先ほどもいいましたが、目的が抽象的なため、実際はあまり効果ありませんでした。

投機目的の土地売買は行われ、そしてバブルがはじけ、土地の価格は暴落。

二束三文となり、買い手は見つからず、そのまま土地が放置されているのが現状です。

そんな『土地基本法』は、2020年4月に改正されました。

ザックリ改正内容を説明すると、関係省庁や自治体が、土地の利用及び管理の計画を作成する。

農地、森林の適正な利用・管理をはじめ、所有者不明土地等の問題に対応する。

土地取引の適正な活性化、土地の境界調査など、一部改正といっていますが

さまざまな部分が改正されました。

これとあわせて、相続登記義務化や相続土地国庫帰属法なども改正・創設され

すべては繋がっているように思います。

これから数年の間で、土地に関する取り扱いは急激に変わっていくかもしれません。

これからの土地利用を考える

今回、二つの土地に関する法律をご紹介しましたが、最後に法律についてではなく

土地利用について『所有』と『利用』の考え方を少し書きたいと思います。

さきほど紹介した中で、日本人の土地に関する考え方は

『投機価値あれば所有あり。』 という土地を一種の『物』として扱っているように思います。

しかし欧米では、土地は『物』というのとは違い、利用する目的があってはじめて所有する

『利用なくして所有なし。』という考え方で、日本人の考え方とは異なります。

私自身、ヨーロッパへ旅した時に感じた都市機能がしっかり区分されていたのはそのためなのではないかと感じています。

そして、これからの日本の土地活用もこれまでの 『投機価値あれば所有あり。』 から

『所有土地をいかに利用するか。』 へと変えていかなければならないと考えています。

なかなか難しいとは思いますが、将来の子どもたちのためにできる限り変えていければと思っています。

今回はここまでにしたいと思います。

ありがとうございました。