農業分野における知的財産権:地理的表示制度(GI)について

みなさん、こんにちは。ご無沙汰しております。行政書士の野口です。

6月より投稿が止まってしまいました。この間も色々刺激になる方たちとの出会いや事業立案など投稿したいことはたくさん出てきているのですが、まとめることができず、遅くなりましたが少しづつですが投稿していきたいと思います!

さっそく今回のテーマは『農業分野における知的財産権について』ということで書かせていただきたいと思います。

なかなか堅そうなお話ですが、これからの農業は地域の財産権をはじめ世界へ日本の農業を広げるために必要な財産権など確認することが重要となります。特に重要となるのは『地理的表示制度(GI)』と考えております。

野口真守行政書士事務所は2025年大阪万博に向けてこの『地理的表示制度(GI)』の事業化を周りの協力してくれる方たちといっしょに進めていきたいと考えています。

また、大阪府行政書士会の法人研究会では8月より2ヶ月に1回『農業支援ゼミ』を開始致しました。そしてこの『農業支援ゼミ』の幹事をわたくし、野口がさせていただいております。『地理的表示制度(GI)』以外にも農業支援にご興味のある行政書士の先生がいらっしゃいましたらご連絡いただければと思います。

また今回の『地理的表示制度(GI)』は行政書士の先生以外にも農家さんや各地域の農業団体の方などにもご参考にしていただければと思います。

それではまず、『地理的表示制度(GI)』からご紹介致します。


『地理的表示制度(GI)』について

農林水産省HPより引用

ロシアとウクライナの戦争により日本の自給率や肥料の輸入についてこれまでにないくらい新聞やメディアでも取り上げられています。私も某新聞社の新聞を読んでいますが、昨年と比べ10倍以上に記事が書かれているように感じています。

それだけ日本では農業が注目されており、新規就農者や先日ご紹介した『半農半X』をしたいという方が増えてきているように思います。

しかし、新規就農者の方をはじめ、農家さんが抱える問題の一つが

『農作物の価値をいかに高めるか』

という悩みがあります。

今回ご紹介する『地理的表示制度(GI)』は、その農作物・特産品の価値を高め、またその価値を保護することができます。それでは『地理的表示制度(GI)』についてご紹介していきたいと思います。

『地理的表示制度(GI)』とは、農林水産物のそれぞれの地域ならではの特徴的な特産品の名称を知的財産として保護するためにできた制度です。2015年の6月よりスタートした制度で、2022年現在で42都道府県と2か国あわせて計119産品が登録されています。

この『地理的表示制度(GI)』の特徴は、産品登録をすることにより、産品の名称(地理的表示)を知的財産として保護し、またこの制度を通じて産品を生産する生産業者の利益の保護を図るとともに、農林水産業や関連産業の発展、需要者の利益を図ることに繋がるところにあります。特に重要なのがこの保護の範囲についてです。日本と協定を結んでいる国(台湾・ミャンマー・ラオス・マレーシア・ニュージーランド・カンボジア・フィリピン、オーストラリア・韓国・EU・中国・インド)についてはこの『地理的表示制度(GI)』で保護されますので輸出する際、安心して輸出することができます。

知的財産といえば『弁理士』の業務と思われますが、この『地理的表示制度(GI)』は農林水産省が管轄しているためか、申請業務は行政書士の専業となっています。また最近改正された『種苗法』も行政書士の専業となっています。ただし、実際には『弁理士』の先生方にもご協力していただくことも多く、『弁理士』の先生の力も必要です。余談ですが、私も知り合いの『弁理士』の先生と協力して『地理的表示制度(GI)』を広げていきたいと思っています。

話がそれましたが、産品登録にはその地域の伝統があり、その産品の品質が生産地と結びついていることが重要となります。そのため新品種ではなく、その地域に昔からある産品であることが重要であり、またあわせて品質維持も確立しなければなりません。

その地域でなければならないという『地域の伝統』とその地域だからこそできる『品質維持』の要素が必要となります。そのためただその地域で生産すればいいわけでないため、産品の生産方法や管理体制なども考えなければならず、実際には産品登録は簡単ではありません。しかしこの産品登録をすることにより、生産者は、適切な評価・財産的価値の維持向上をすることができ、また需要者は、表示された産品を信頼して購入することができます。

そのため名称にも特徴があり、①地域名と②生産物名の二つによるところです。

例えば、私がぱっと思いついた特産品ですが『夕張メロン』『神戸ビーフ』『万願寺甘とう』などです。これらの特産品は一般的にも耳にすることが多いような気がします。

そして農林水産物以外にも『三瓶そば』のような郷土料理や『琉球もろみ酢』など調味料も『地理的表示制度(GI)』登録することができます。そして私が最も驚いたのが、東京都も『東京しゃも』という登録産品があったことです!

反対に残念なのが、大阪府は登録産品がない!?ことです。そのほか、群馬県・埼玉県・千葉県・長野県の4県も実は登録産品がありません。それぞれ農業が盛んな地域であるにもかかわらず登録産品がないというところが意外ではないでしょうか。

大阪府でもまずは1産品『地理的表示制度(GI)』登録を目指していきたいですね。


『地理的表示制度(GI)』のメリット

【 農林水産省:地理的表示及びGIマークの表示について より引用 】

『地理的表示制度(GI)』には色々なメリットがあります。

更新手数料が不要

まず一つ目が、更新手数料が不要で、登録免許税を納付すればその後、費用は発生しません。

『地理的表示制度(GI)』に似た制度で『地域団体商標』というものがあるのですが、こちらは更新手数料が必要となります。

そのため『地理的表示制度(GI)』は、比較的継続させやすい制度かもしれません。

登録商標(GIマーク)が使用可能

次に、上記画像にもある『GIマーク』の使用をすることができます。この『GIマーク』を使用することにより、他の農作物と差別化され、わかりやすくなります。

行政が取り締まる

万一『地理的表示制度(GI)』が不正使用された場合、行政が取り締まりをしてくれます。

通常の商標については当事者間の裁判となることが多く、そのため裁判が決裁されるまでの時間や費用がかかりますが、『地理的表示制度(GI)』は行政が取り締まるためその時間や費用がかからないところがメリットとなります。

地域共有ができる

そのほかにも、新たに地域へ生産者団体の構成員として加入した農家さんも生産方法や管理体制のもと特産品を生産することができ、その名称を使用することができます。

そのため、新規就農者にとってもその地域で営農することにメリットがあり、新規就農者に来てもらうことにも繋がると期待されています。


2025年大阪万博までに

大阪のシンボル:中央公会堂

本日は、ここまでとなります。

農業に関する知的財産権については今回ご紹介した『地理的表示制度(GI)』以外にも、『地域団体商標』や『種苗法』などもあり、その目的はそれぞれ異なります。

たそれらはおいおいご案内できればと思います。

その前にまずは、2025年大阪万博までに大阪府で『地理的表示制度(GI)』の登録をしたいなと思っています。せっかくの世界的イベントですのでこの機会を逃すわけにはいきません!

是非とも!大阪府下の農家さんといっしょに『地理的表示制度(GI)』を目指したいと思います!

ありがとうございました!