農地法3条許可を利用する前に。それ以外にも方法があります!

こんにちは。行政書士の野口です。

先日、コロナ前ぶりにスーパー銭湯へ行っていきました。日曜日の夕方前だったので人も多く、コロナ前に戻ったかのようでしたが、館内には『黙浴』という文字が貼られ、皆さん黙って入浴されていました。これがニューノーマルな入浴なのかと感じる一日でした。

さて今回は、農地を農地のまま売買に関する手続きについてご紹介します。

農地を農地のまま売買を行う場合、相手方(買い手)となる農家を見つけて、農地農業委員会の許可を経て売買する(農地法3条許可)のが一般的ですが、実はそれ以外にも方法があります。今回はその方法と条件等をご紹介します。


はじめに、農地法3条許可について

農地を農地のまま、所有権等の権利を設定・移転をする場合

例えば、売買や賃貸借・使用貸借等の場合、農業委員会等の許可が必要となります。これを農地法3条許可といいます。

この農地法3条許可なしに売買契約を締結したとしても効力が発生しません。万一、移転登記ができたとしても、その契約は無効のままで所有権等の権利は設定・移転されていないことになります。そのため農地売買契約をする場合、農地法3条許可を申請と農地売買契約を締結、それとあわせて所有権移転の仮登記をします。そして農地法3条許可が下りれば正式に所有権移転登記を行うという手順が一般的となります。

このように農地の権利設定・移転の手続きは他の土地売買と異なり、非常に手間がかかり面倒なことが多くあります。ちなみに、農地法3条許可申請の業務は行政書士がすることができ、権利の設定・移転登記は司法書士の業務となります。

また農地の場合、仲介してくれる不動産会社が少ないため当事者同士で契約書を作成する場合もあるそうなので、その場合は注意が必要です。


『農地中間管理機構』の利用とメリット

『農地中間管理機構』を利用した売買方法

上記でご紹介した農地法3条許可以外に農地売買の方法があります。それが 『農地中間管理機構』の利用 した売買方法です。

『農地中間管理機構』 とは、各都道府県に一つある独立行政法人で主に農地の貸借支援を行い、農地所有者と担い手の間に入って調整する機関のことです。

上記の図を見てもらうと分かりやすいのですが、農地所有者農地耕作者の間に『農地中間管理機構』が入り、それぞれと賃貸借・使用貸借等の契約を締結し、権利の設定・移転をします。

つまり権利の流れは、①農地所有者から『農地中間管理機構』へ農地の権利を移転し、その後、②『農地中間管理機構』から農地耕作者へ農地の権利を移転します。これにより農地所有者と農地耕作者のそれぞれの相手方は『農地中間管理機構』となり、公正・中立を担保することができるのです。

『農地中間管理機構』は主に貸借支援を行っておりますが、条件により売買契約も行っており、この制度を利用することによるメリットもあります。

『農地中間管理機構』のメリット

『農地中間管理機構』の制度を利用することにより、都道府県により異なりますがさまざまな支援を受けることができます。

まず、農地の権利設定・移転のための農地法3条許可等の申請は不要となります。これは各自治体等の『農用地利用集積・配分計画』により許認可を行うからです。そのため農地所有者は許可申請しなくてもよくなります。また、都道府県により契約書の作成や登記手続き等も行ってくれるところもあり、煩わしい手続きを行わなくてもよくなる場合もあります。

他にも農地所有者はこの制度を利用することにより、譲渡取得税の特別控除を受けることができ、また農地耕作者は登録免許税の軽減や不動産取得税の一部控除がされるため、双方にメリットがあります。

『農地法3条許可不要』『契約手続きが公正・中立』『税の優遇がある』


『農地中間管理機構』を利用する場合の注意点

上記のようにメリットが多い制度ですが、注意点もあります。

①農地の立地による

この制度は市街化調整区域のみで利用できる制度のため、市街地にある生産緑地では利用できません。そのため生産緑地では通常の農地法3条許可申請で手続きを行わなければなりません。また売買の場合、都道府県により市街化調整区域の中でも更に農用地区域などに限定されている場合がありますので確認が必要です。

②農地の現況による

次に市街化調整区域の農地であれば全ての農地が利用できるわけでもなく、その農地の管理状態により制度を利用できない場合もあります。例えば耕作不能農地や森林化している農地などです。遊休農地でも耕作ができる状態であればこの制度を利用することができる場合もあります。そのため農地は売買できる状態を継続させなければならないのです。

③その他要件がある

そのほかにも、担い手も認定就農者等すでに農業をされている方など、要件があり誰でも担い手になれるわけではありません。ただしそれぞれの要件度合いは都道府県により異なりますので、確認が必要です。


最後に

以上が『中間管理機構』を利用した農地売買についてでした。

利用の仕方によっては当事者双方にメリットが多い制度ですので、いきなり農地法3条許可をするのではなく、こういった制度を利用できるかどうかを確認してからでもよいと思います。また、この制度を利用できるかどうかがわからない場合、当所へお気軽にご相談いただければと思います。