「盛り土規制法」施行により、相続した森林はどうなる?

盛り土規制法」とは?

この度は野口真守行政書士事務所のHPをご覧いただきありがとうございます。当所は都心部の大阪市内では珍しい農地・森林・農業専門の行政書士事務所です。大阪市内ですが全国各地にある農地・森林の、相談をはじめ、調査・診断・助言・手続等をさせていただいております。農地・森林の活用でお困りでしたらお気軽にご相談下さい。

今回ご紹介するのは、「盛り土規制法」施行により、相続した森林はどうなる?

についてです。当事務所でも、ご相談の多い森林ですが、相続した後どのようにしたらよいか悩まれる相続人の方も多くいます。その中で「盛り土規制法」が施行されたことにより森林相続人の負担がどうなるのか。今回は、そのあたりを確認していきたいと思います。

それではまず『盛り土について』からご紹介したいと思います。


〇「盛り土」は、森林の国である日本ならではの土地造成。

はじめに『盛り土』についてです。

『盛り土』とは、谷や斜面などに土を盛り、土地を平らに造成する工法のことで、国土の約8割が森林や農地である日本では、住宅など建物を建てるのに宅地造成として普及しました。

その『盛り土』についての新法である「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称:「盛り土規制法」以下、「盛り土規制法」)が令和5年5月26日に施行されました。この法律は、宅地造成等規制法を改正し、用途を問わず全国一律で規制されることになりました。

「盛り土規制法」について詳しくは、国土交通省HP こちら

この「盛り土規制法」は、各都道府県が被害の恐れがある区域を指定することができ、土地所有者は新たに盛り土をおこなう際には許可が必要になるほか、既存の盛り土に対しても安全な管理することを努力義務とし、管理責任を負うことになります。

これまで盛り土については、各自治体ごとに条例で定めていたため、規制のゆるい自治体では残土などが運ばれやすく、違法、不法な盛り土もされていました。

しかし新たに「盛り土規制法」が施行されたことにより、全国的に規制が統一されるため、違法、不法な盛り土の包括的な抑制になると期待されています。


〇「盛り土規制法」のキッカケとは?

今回「盛り土規制」』が施行されたキッカケですが、2021年7月に関連死を含めて28人が亡くなった静岡県熱海市の土石流災害です。

この土石災害の発生原因は、建設残土を山中などに積み上げたことで大きな問題となりました。

また土地の補強や排水対策なども疎かにされ、更なる被害へと繋がったといわれています。

そのほかにも『盛り土』については、森林法や農地法のほか自治体の条例などさまざまな法令が多岐にわたり、規制の緩い地域で違法、不法な盛り土がおこなわれていた経緯もあります。


「盛り土規制法」の罰則はかなり重い!

〇法人は、最大3億円の罰則!それ以外にも厳しい!!

この「盛り土規制法」は、実は、罰則についてかなり重くなっています。

その特徴として、一般的には何か法令違反をおこなった際、罰せられるのは現所有者のみが罰せられることがほとんどですが、この「盛り土規制法」については、過去の所有者をはじめ、工事事業者などに対しても是正措置を命じることができるようになっています。それは、相続人ももちろん含まれます。

また罰則についても法人については、上限が3億円と、かなりの厳罰化がされています。

これら罰則の重さを考えると、安易な森林の売買は、特に注意が必要となります。


「盛り土規制法」によって、森林の相続人はどうなる?

〇「相続したけど、知らない。」は、通用しない。

この「盛り土規制法」により、森林を相続した所有者は特に注意が必要となります。

その理由として森林を相続した方の多くは、相続した森林について行ったことも見たこともなく、ひどい場合は所在地も知らないため、長期間放置されている状態にあるためです。

長期間放置されている場合、ちゃんと管理がされていないため産業廃棄物や残土などの不法投棄がされやすく、上記で記載したような土砂災害の原因となる可能性があります。

また不法投棄された産業廃棄物や残土などの処分は、森林を相続した相続人が責任負うことにもなります。

そして『盛り土規制法』が施行されたことにより、これまでのような『相続したけど、知らなかった。』ではすまなくなり『無関心』は通用しなくなります。


最後に

〇昨今の異常気象による自然災害リスクにも注意が必要。

以上が『盛り土規制法施行により相続した森林はどうなる?』になります。

『盛り土規制法』は、その地域の住民にとっては生活に関わる可能性があるため、必要な法律です。

また相続人にとってもご自身がしっかり管理しないと罰せられる可能性があるため、相続した土地に関心を持つことが重要です。

そして行政や私たち士業が、この制度を相続人や地域の住民へ周知することが特に重要と考えています。

因みに、地域森林計画区域の森林は市町村への届出が必要となります。行政書士へご相談下さい。

相続による森林の市町村届出について詳しくは当事務所HP こちら