こんにちは。行政書士の野口です。
今回は、森林の経営管理と将来性について書きたいと思います。最近ではコロナ禍によるアウトドアブームもあり、森林が注目され所有を考える方も増えているそうです。そんな森林についての基礎知識や経営管理、将来性について書きたいと思います。

森林の種類
最初に森林の種類についてをご紹介します。
『国有林』と『民有林』・『公有林』と『私有林』
まず森林は国土の約66%にあたり、おおよそ2,510万haになります。日本の国土が3,779万haですので、その広さは相当なものです。そして森林は大きく分けて『国有林』と『民有林』の2種類に分かれます。まず『国有林』は字のごとく、林野庁をはじめとする国の機関が所有する森林です。その面積は約769万haで国土の約2割にあたります。次に『民有林』は、ここから更に『公有林』と『私有林』の二つに分かれます。『公有林』は都道府県や市町村などの自治体が所有する森林をいいます。『私有林』は個人や企業など私たち私人が所有する森林をいいます。そして 『公有林』 の面積は約283万ha、『私有林』の面積は約1,458万haで、合わせると1,741万haとなり国土の約46%にあたります。
『生産林』と『環境林』
森林にはそれぞれ目的・用途があります。それが『生産林』と『環境林』です。
『生産林』とは、環境に配慮しながら木材を生産することを目的とした森林のことです。主にヒノキやスギなどを生産しています。『環境林』とは、さまざまな生活環境を保全するため管理・維持される森林のことです。例えば、風よけになるような森林などがそれです。このように森林といってもその目的・用途により異なります。また市町村による森林整備計画により、その目的・用途に沿った森林区域を指定する場合もあり、森林の利用・管理をする際、確認が必要です。
『国有林』『民有林』『公有林』『私有林』『生産林』『環境林』
山林とは
上記で森林の種類についてご紹介しました。こちらでは土地登記の注意点、『地目』についてご紹介します。
山林にあたる土地と当たらない土地の違い
森林について確認する場合、土地表題登記の『地目』を確認する必要があります。まず『地目』とは、土地の用途・現況・利用方法などの分類のことで全部で23種類あります。その中で『森林』を確認する場合、注意点があるのです。それは地目に『森林』という分類はなく『山林』などいくつかの地目で表されているのです。
まず『山林』ですが、地目分類によると『耕作の方法によらないで竹木の生育する土地』とされています。ここでいう『耕作の方法』とは、田畑などの農耕地を耕作すること(たい肥を与えたりなど)を指していると思われ、山林は耕作によらないとされています。また『竹木』ですが、そのまま竹や木を指していると思われます。
ただし、”かん木”(2~3m程度の高さの木)はそれに当たらず『原野』となりますので注意が必要です。
保安林について
『山林』や『原野』のほかに『保安林』があります。
保安林とは『森林法に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地』とあります。
指定の目的は簡単にいうと、自然災害の発生や生活環境などから住民を守るためです。またその『保安林』指定を行うのは農林水産大臣であり、また都道府県知事が行う場合もあります。
そしてその『保安林』に指定されると、その指定目的に沿った森林を保存・管理をしなければなりません。また『保安林』指定解除の権限は、農林水産大臣や都道府県知事にあり、所有者が勝手に解除ができるわけではありません。そのため森林は、どの地目にあたるか常に確認する必要があります。
『山林』 『原野』 『保安林』
森林経営管理のこれから
森林所有者は、森林を管理する義務と責任があります。しかし、森林を管理することは簡単ではありません。こちらでは森林の経営管理のこれからについて考えます。

『森林経営管理法』により森林管理は変わるのか
関東のとある市で、森林所有者に森林管理について調査したところ、過半数の所有者が全く管理をしていないという調査結果がありました。この問題はこの市だけでなく全国的な問題でもあります。
そのため、2019年4月に『森林経営管理法』が施行されました。これにより以下の内容ができるようになりました。
- 森林所有者の責任の明確化。
- 所有者で管理ができない場合、市町村が経営管理権等を設定可能。
- 森林経営管理できる場合、経営管理者へ管理を促す。
- 森林経営管理できない場合、市町村が経営管理を行う。
- 所有者不明森林について、所定の手続きにより市町村が経営管理を行うことができる。
これにより森林所有者の負担軽減や生産林や保安林などの区域分けもしやすくなり、森林利用の広域・統一的な経営計画がしやすくなります。そのほか、相続により森林所有者となった方も経営管理を委託しやすくなり、森林放置の抑制にも繋がると考えらています。
この法律により市町村が大きな役割・権限を持つことになりますが、現実的には各市町村の手腕によるところが大きく、また経営管理集積計画の作成等、市町村の調査・手続き・所有者に対する意向調査にもよるため、今後に期待するところです。市町村の担当の方、頑張って下さい!
『森林経営管理法』
森林の可能性と将来性
森林所有者の中には森林が負担となっている方もいるかもしれません。しかし調べてみると、森林は価値のあるものかもしれません。こちらではそのような可能性と将来性を考えます。
もしかしたら、本当の金の成る木の可能性
森林の種類に『人工林』というものがあります。これは 終戦後や高度成長期に造林され た森林のことです。現在『人工林』は50年を超える林となり、主伐期と呼ばれる木材等に適した時期に入った林が約半数にのぼるといわれています。そのため、現在所有している森林がその時期に入っていれば樹木を売買できる可能性があります。 森林=負担でなく、森林=収益となるかもしれません。
Co2削減やSDGsの将来性
世界ではCo2削減が大きな問題となっています。それはもはや大企業や国家政策にも反映されるくらいの問題です。そして現在、多くの国家や大企業はどれだけCo2削減できるかを考えています。
それとは別に、森林が注目されつつあります。なぜなら森林は、Co2を吸収し、酸素を排出するためです。また、森林は管理をちゃんと行えば持続可能であるためSDGsにも繋がり、これほど効率的な方法はありません。今後世界の動きによっては、森林の価値が上がるかもしれません。そのため、森林の経営管理は将来性があります。次世代のこどもたちのためにも森林管理は今から必要なのかもしれません。
『人工林』『Co2削減』『SDGs』
最後に
今回はここまでとなります。
森林はバブル期に多くが投機目的で売買され、その後価格が下がり、そして放置されている状態が続いているのが現状です。そして、これから新たにバブル期に所有していた人たちからその子どもたちへ相続承継される時期へと移ろうとしています。森林を承継した相続人には、できる限り早期に森林について経営管理を考え、うまく利用してほしいと願います。
ありがとうございました。