はじめに
○『相続後』放置することは許されない、森林。
親族が亡くなった時、さまざまな相続手続きをしなければなりません。親族への連絡や葬儀場の手配、死亡届出や健康保険の資格喪失などの行政等の手続きを行い、それが終わると、相続税の納税や遺産分割協議・実行を行い、これら相続が完了するまで相当な時間や費用がかかる大変な作業です。
そして相続手続き完了後、新たに問題が発生する場合があります。それは、森林を相続した場合です。なぜなら相続人は、森林を所有している限りその森林を管理しなければならず、さまざまな義務や負担を負わなければならないからです。特に森林は近年、土砂崩れや地すべりなどの自然災害が多発し、その責任や損害賠償はすべて所有者が負担を負わなければならなくなります。見て見ぬふりの放置は許されません。
そのため森林を相続した場合、その相続後の経営管理方法が重要となります。特に森林は所有者自身で経営管理できない場合が多いため、林業の専門家などにお願いすることもよくあります。しかし、そのお願いする相手方や内容はその森林が立地している所在地により異なるため一括りにはできず、森林所有者が抱える問題でもあります。
そのため当所では、この問題を解決するため『森林の相続後経営管理支援事業』を行っております。少しでも相続人の方の負担を減らすことができればと思っておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。
それでは当所の『森林の相続後活用支援事業』の内容をご紹介します。支援事業内容は以下の3つです。
- 相続による森林届出
- 森林の現状確認調査
- 森林の活用手続き等
以下より、各支援事業内容をご説明します。
【 1.相続による森林届出 】
○森林や農地を相続した相続人は、相続した旨を届出する必要があります。
その目的は、市町村等 が森林の現在の所有者を把握することにより、その地域の森林活性化や森林の経営管理等を円滑に行うためです。現在、所有者不明森林が問題となっていますので相続による森林届出は重要です。なお、森林に関しては相続以外による権利移転の場合も届出が必要です。ご注意下さい。
また森林の所有者にとっては、届出をすることにより市町村等からさまざまな支援を受けることができるようにするためでもあります。近年、林業支援が活発となっており令和元年には『森林経営絵管理法』が施行され、今後、森林所有者の負担軽減に繋がると当所は期待しています。
そのほか届出をしない場合、十万円以下の過料に処されますのでご注意下さい。
【 2.森林の現状確認調査 】
主な現状確認調査は以下の5項目。
森林はほかの土地と違いさまざまな種類があります。国が所有する”国有林”をはじめ地方自治体が所有する”公有林”、私たち個人や法人等が所有する”私有林”などがあります。これらの森林は、その所有者により森林の趣旨や目的が大きくかわります。そのほかにも森林の種類の一つに”保安林”という森林があります。これは”私有林”に対して公益目的のため指定された森林で、所有者に対して経営管理の規制がされる森林となります。また森林は、その地域の環境や状況により経営管理方法に対して規制がなされる場合もあります。
そのため森林の売買や貸借、利用方法の変更(転用)など経営管理を行う場合、まずどのような規制や森林の状態など現状を確認をする必要があります。この確認を怠って経営管理をしてしまうと後に大変なことになってしまう場合あります。
そのため当所では以下では主な現状確認調査、5項目を行っております。なお権利や現況等により、これら5つ以外にも確認しなければならない場合もあります。予めご了承下さい。
主な現状確認調査事項は、以下の5事項となります。
- 森林の権利
- 森林の表題部
- 森林の筆界等
- 森林の現況
- その他、森林計画等
以下より、各 現状確認調査事項をご説明します。
①森林の権利
まず、森林の権利について確認します。権利に関しては 登記簿謄本 の『権利部』(甲区)(乙区)を確認します。
主な確認ポイントは以下の3つです。
森林相続人・共同相続人の確認(甲区)
まずはじめに、森林の相続人を確認します。主に森林所有者(被相続人)の配偶者・子・両親・兄弟姉妹などです。また遺言書による遺贈や、生前贈与などの場合もあります。そのほか相続人が複数いる場合も想定されます。共有者が複数いる場合でよくあるのが、連絡も取ったことのない親戚が相続人にいる場合があります。相続人が不明であるとできることが限られてしまい、またその場合の手続きを行わなければなりません。このように森林の相続人がどのような方なのかにより経営管理の手続きが大きくかわりますので必ず確認してます。
相続人以外の森林共有者の確認(甲区)
相続した森林が被相続人単独所有でない場合もあります。森林の売買や貸借・利用方法の変更(転用)などを予定している場合、森林共有者の確認をしなければなりません。古い登記簿の場合、共有者が亡くなっている場合もあります。そのような場合はその親族の探索も必要となります。
所有権以外の権利設定の確認(乙区)
森林をはじめ不動産の権利には所有権以外にも抵当権や賃貸借権・地上権などの権利があります。
②森林の表題部
次に、森林の表題部を確認します。 主な確認ポイントは以下の3つです。
森林の所在地
森林所在地の確認をします。所在地は所在・地番と書かれている部分で、普段使っている住所と異なります。また、市町村合併による地名変更されている場合もあります。地図で確認を行いますが、森林は広大であるため、正確な位置や大きさがわかりにくい場合があります。間違って他人の森林を含めてしまわないよう十分な確認が必要となります。
森林の地目
森林の地目を確認する際、特に”保安林”であるかどうかを確認します。これにより今後の経営管理方法がかわるためです。また”保安林”であった場合、どのような趣旨・目的となっているのか確認をします。
因みに”保安林”とは、
≪水源の涵養、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成等、特定の公益目的を達成するため、農林水産大臣又は都道府県知事によって指定される森林です。保安林では、それぞれの目的に沿った森林の機能を確保するため、立木の伐採や土地の形質の変更等が規制されます。≫(林野庁HPより引用)
となっており、”私有林”であっても規制されていいます。
森林の地積(面積)
森林はその面積が広大なため実際に測量した場合、地積が変更となる場合があります。また、次でご紹介しますが、筆界特定よっても地積が変更となる場合があります。そのため森林の権利移転や利用方法の変更(転用)を考えている場合は特に確認が必要となります。
③森林の筆界等
森林を売買等する場合、隣接する土地との『筆界』を確認します。主な確認ポイントは、以下の2つです。
公図を確認
まず、土地の『公図』と呼ばれる”地図”又は”地図に準ずる図面”のどちらであるか確認をします。
”地図”である場合、『不動産登記法14条第1項』規定の精度が高い図面になります。この図面であれば『筆界』も正確なものであるため不動産取引を円滑に行うことができます。
”地図に準ずる図面” である場合、明治時代に測量された図面で精度が低い図面となります。”筆界”を調査する際の資料となりますが、不動産取引で利用できる図面にはなりません。
筆界特定制度の利用
”筆界”の位置がわからない場合、『筆界特定制度』を利用します。
この制度を利用することにより、筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえ,現地における土地の『筆界』の位置を特定してくれます。
④森林の現況
土地は『現況主義』とよばれ、その土地の現在の状態に基づきます。例えば、登記簿謄本と土地の現況が異なっていた場合、登記簿謄本の地目を土地の現況にあわせて変更しなければなければなりません。
そのため土地の現況を確認することは重要です。必ず現地へ足を運びます。
主な確認ポイントは以下の2つです。
森林の現況と地目が合っているか確認
通常、現況と地目は一致しています。しかし、現況と地目が異なっている場合が森林ではよくあります。その多くは農地等が放置され、その後、森林化してしまう場合です。例えば、農業を営んでいた祖父母が亡くなり、相続した両親が市街地に在住していたためそのまま農地を長期間放置状態となり、その後孫が相続したころには森林化している場合などがあります。
そのため地目が『田』・『畑』であっても現況が森林となっている場合、まず地目変更の手続きが必要となり個別の対応をしなければなりません。このようなケースは多くあるため現況確認は必ず行わなければなりません。
地域の森林の環境や状況を確認
森林の多くは一つのかたまりのように隣接して一団となっています。
例えば、一つの山林を数人の所有者で所有している場合があり『所有者による山林の共有』のような場合です。この場合、所有森林の経営管理をしようとしても、周辺森林所有者が共同で利用している林道や水源などがある場合、他の周辺森林所有者の利用に支障をきたさないようにしなければなりません。
そのため所有者自身の考えだけで森林の権利を移転したり、利用方法の変更(転用)をすることが容易ではない場合もあります。あくまでその地域にあわせた経営管理を考えることが重要です。
⑤その他、森林計画等
森林はその地域により細かく規制や制限がされている場合があります。また反対に、法令や地域でさまざまな支援をしている場合もあります。その地域固有の制限・支援になりますので確認をします。
主な確認ポイントは以下の2つです。
森林経営管理法
2019年に『森林経営管理法』という法律が新たに創設されました。この法律は、森林の経営管理ができない所有者に代わり市町村等が経営管理を行ってくれるという画期的な制度です。まだ施行されて2年目ですので、これから活発に利用されることを期待している制度でもあります。
森林計画等
市町村はその地域の森林を経営管理するため『森林計画』をたてます。森林所有者はその『森林計画』に沿って経営管理を行いますがそれができない場合、市町村からの支援を受けることができる場合があります。各市町村により『森林計画』は異なるため確認をします。そのほか、地域の組合等による支援をしているところもあります。
以上が主な現状確認調査、5項目となります。これら5項目以外にも相続の内容や森林の立地等により更に追加項目がある場合もあります。
【 3.森林の活用手続き等 】
森林の活用方法はその地域にあわせて行う。
『2.森林の現状確認調査』で森林の現状が確認できたらそれをもとにして当所から助言を致します。そして依頼者の意思により、森林の経営管理方法を検討し、方針が決まればその手続きを行います。
活用方法はさまざまあります。経営管理ができない場合は売却や譲渡・貸借など、依頼者自身で活用される場合は森林の利用方法の変更(転用)などが考えられます。
また近年、国や地方自治体による森林保護のための制度や支援が増えています。それらの利用を検討することも必要です。
当所は調査や助言・手続き等は致しますが、最終的に決断をされるのは依頼者の方、本人となります。
当所の『森林の相続後活用支援事業』は以上となります。お気軽にご相談下さい。
以上『森林の相続後活用支援事業』の内容でした。
こららで紹介した『森林の相続後活用支援事業』は、主な支援内容となり、実際はこれ以上に調査や手続き等が必要な場合も多くあります。また①届出~②調査~③手続き等までを完了するのに相当な時間がかかることをご理解いただければと思います。
例えば、相続した森林が複数の場合や共有者等がいる場合、調査が困難な場合、手続きに時間がかかる場合など 、数か月~1年以上かかる場合もあります。 予めご了承いただければと思います。
最後に、森林は放っておくと問題や負担が必ず大きくなります。まずは早期にご相談下さい。
報酬について
【 報酬金額一例(税別) 】 森林の相続後活用支援事業:15万円~要相談 (内訳) ①相続による森林届出:2万円~(1筆1haまで)2筆目から要相談。 ②森林の現状確認調査:8万円~(1筆1haまで)2筆目から要相談。 ③森林の管理手続き等:5万円~(1筆1haまで)2筆目から要相談。 ※1.必要経費が別途必要となります。(交通費・各種書類取得費用等) ※2.ご依頼の立地等により、報酬金額が異なる場合があります。 ※3.森林の現況を確認ができない場合があります。 ※4.ご依頼内容により、他士業の協力が必要な場合があります。(別途費用) ※5.現状確認調査により、ご依頼者のご希望に添えない場合もございます。