みなさんこんにちは。農地・森林専門の行政書士、野口です。
最近になり少しずつHPの方も更新できるようになりました。
行政書士の業務はどうしても範囲が広く、色々と知識を増やすため日々学ばなければならないのですが、その中でもある程度学ぶ範囲を削らなければなりません。すべてを一人でこなしていくのは無理であると日々感じております。
そんな中で最近、私のまわりでよく話題に上がっているのが「空き家」です。市内の分譲マンションの「空き家」をはじめ田舎の農家や昔ながらの古民家などさまざまあります。
コロナ禍をきっかけに一般の方が地方の「空き家」物件購入が増加しておりますが、その「空き家」物件の中には問題を抱えている「空き家」もあります。
例えば、再建築ができない”再建築不可物件”がそうです。『空き家』は築年数が古い物件が多いため、再建築ができるかどうかはとても重要です。この”再建築不可物件”であるかどうかを確認する方法として、その建築物の土地について調べます。それ以外にも土地を調べることにより様々なことを確認することができます。
今回は「空き家」を購入する際に、見落とされがちな『土地』の重要性や確認しておいた方がよい主な3つのポイントをご紹介したいと思います。
これから「空き家」購入をお考えの方には、参考になるのではないかと思います。
それではまず「建築物が立地する土地について」からはじめたいと思います。
建築物が立地する土地について
○土地の立地により、用途が異なる
まずは「建築物が立地する土地」についてです。
住宅をはじめ店舗やオフィスビルのほか、工場や産業廃棄物処理場、火葬場、農地、森林等さまざまな用途の建築物や用地があります。これらの建築物等はどこでも建てることができるわけではありません。
それぞれ法令や計画等により建てられる建築物や用地の利用方法が定められ、その用途と異なる建築物を建てることができないように規制されています。
そのため建築物は、土地の立地よって建築できる建築物が異なります。また土地自体を利用する場合も同じで、その土地の立地によって用途が異なります。
例えば、高層マンションを建築することができる土地は市街部でも限定されています。また農地も農業をするための土地であるため、耕作以外の利用は原則できません。このように土地の立地によって、それぞれ用途が異なるのです。
これは「空き家」を購入する際に重要となります。なぜなら土地の用途は常に変化しているためです。
例えば、法令や計画等の施行時期により規制の範囲が変わったり、その規制内容自体が変更したりします。そのため建築物の建築規制もそれに合わせて変わり、現在どのような『土地』に立地しているか確認しておかなければ、「空き家」購入後に利用できない場合も実際にあります。
そのため「空き家」を購入する前に『土地』の確認をすることは非常に重要となります。
ここからは、主な『土地の確認する3つポイント』について順にご紹介致します。
『土地の確認するポイント』①都市計画区域・用途地域等
○都市計画区域とは
『都市計画区域』とは、都道府県知事や国土交通大臣が指定し、都市計画を実施する土地のことです。
高度成長期の頃に無秩序な都市開発が各地でされたため、それを抑制するために”都市計画法”ができました。『都市計画区域』は、その”都市計画法”に基づいて指定される区域のことです。
『都市計画区域』の主な区域は、大きく分けて二つあります。『市街化区域』と『市街化調整区域』です。この二つの区域は正反対の意味があります。
- 『市街化区域』とは、”市街化を図るべき区域”
- 『市街化調整区域』とは、”市街化を抑制すべき区域”
つまり『市街化区域』は建築物の建築を積極的に行う区域であり、『市街化調整区域』は建築物の建築が原則できない区域となります。
そのため『空き家』がどちらに立地しているかにより、活用方法が大きく変わってきます。特に『市街化調整区域』は、原則建築不可のため、建築物が建っている場合、どのような理由で建築できているのかを確認することが非常に重要です。
このほかにも『非線引き区域』もあり、これは『市街化区域』と『市街化調整区域』の線引きがされていない『都市計画区域』となります。また『都市計画区域』の指定がされていない『都市計画区域外』というのもあります。
○用途地域とは
上記では『都市計画区域』についてご紹介しました。次に『用途地域』をご紹介します。
『用途地域』とは、建築物の用途・容積・形態について制限を定める地域のことで、建てることができる建築物を制限します。『用途地域』の種類は以下のとおりです。
- 第一種低層住居専用地域 低層住宅のための地域です。小規模なお店や事務所をかねた住宅や、小中学校などが建てられます。
- 第二種低層住居専用地域 主に低層住宅のための地域です。小中学校などのほか、150㎡までの一定のお店などが建てられます。
- 第一種中高層住居専用地域 中高層住宅のための地域です。病院、大学、500㎡までの一定のお店などが建てられます。
- 第二種中高層住居専用地域 主に中高層住宅のための地域です。病院、大学などのほか、1,500㎡までの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられます。
- 第一種住居地域 住居の環境を守るための地域です。3,000㎡までの店舗、事務所、ホテルなどは建てられます。
- 第二種住居地域 主に住居の環境を守るための地域です。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックスなどは建てられます。
- 準住居地域 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護するための地域です。
- 近隣商業地域 まわりの住民が日用品の買い物などをする地域です。住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。
- 商業地域 まわりの住民が日用品の買い物などをする地域です。住宅や店舗のほかに小規模の工場も建てられます。
- 準工業地域 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域です。環境悪化が大きい工場のほかは、ほとんど建てられます。
- 工業地域 どんな工場でも建てられる地域です。住宅やお店は建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建てられません。
- 工業専用地域 工場のための地域です。どんな工場でも建てられますが、住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。
これら『用途地域』により、住宅地域や工業地・商業地域など、区分けすることにより生活がしやすくなります。
上記以外にも、条例で定めることができる特別用途地区や都市再生特別地区などがあります。
『土地の確認するポイント』②道路の幅(幅員)
みなさんの住宅前の道路はどのような道路でしょうか? 大通り・対面一車線・一方通行など、どれにあたるでしょうか。
実は、建築物を建てるには”建築基準法”に規定されている『道路』に接する必要があります。
この『道路』とは、道路幅(幅員)が4m以上であり、建築物の敷地が2m以上道路と接している道路をいいます。万一、道路幅(幅員)が4m以下であったり、敷地が2m以下しか道路と接していなかった場合、例外規定を除き、再建築は不可となります。
この規定は、『市街化区域』でも適用されるため、どの建築物においても確認が必要となります。
また道路幅(幅員)4m以下、敷地が2m以下しか接していない場合でも、各自治体により例外規定の事例も多くあるため、建築できる場合があります。そのため、必ず各自治体への確認が必要となります。
但し、昔の長屋や町屋で見られる細い路地に立地している建築物が火災などにより建築物が滅失した場合、再建ができない事例などがあります。最近では、福岡県の観光名所でもある旦過市場(たんがいちば)で火災が2度発生し、多くの建築物が滅失しました。今後自治体がどういう判断・条例をするのか注目されています。
古民家など見た目が良かったとしても、その敷地が接する道路について必ず確認する必要があります。
また道路幅(幅員)を調べる際、私有地と道路との境界が確定しているか(官民境界明示)確認することも必要となります。これについてはお近くの”土地家屋調査士”の先生にご相談されるのがよいでしょう。
『土地の確認するポイント』③危険災害区域
2022年8月3日、一級河川の”最上川”の複数箇所で河川の氾濫がありました。この氾濫により周辺住宅は浸水し、陸上自衛隊への救助要請もされました。近年の世界的な異常気象などにより、日本各地でこういった河川の氾濫や土砂崩れなどの自然災害が増加しています。
これら自然災害に対応するため国土交通省は、2020年より「水災害対策とまちづくりの連携のあり方」検討会を開催しています。
この検討会で提言されたのは
”特にリスクが高いエリアにおいては、居住の誘導を避けるとともに、移転等を促進し、当該エリアに規制をかけた方が合理的な場合もあることに留意し、検討を進める必要がある”
とされました。
そしてこの提言を実行するための規制手法の一つとして、建築基準法第39条の規定に基づく『災害危険区域』を条例で指定し、住居の用に供する建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限を当該条例で定めることが検討されています。
そのため今後『空き家』を購入を検討する際、市街地でも河川に近い場合、この『災害危険区域』に指定されているかどうかの確認が重要となります。また現在『災害危険区域』に指定されていなかった場合においてもその可能性を検討することも必要になります。
最後に
今回はここまでとなります。
『空き家』購入を検討されている方の多くはその建築物に目がいきがちです。しかし、建築物はあくまでも土地の上に建っていますので、まずはその土地を最初に確認することが重要ではないでしょうか。
『空き家』は、誤って購入したら最後。再建築のできない調整区域などの宅地の多くは買い手がみつかりません。そしてその負の不動産は相続人へと引き継がれます。当所への相談も、こういった事案がよくあります。
そのため『空き家』購入をする際は、親族(特にお子様)とよく話し合ってから購入していただければと思います。
また『空き家』を相続された相続人の方は、ご相談いただければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。