叔父の相続人になった!どうしたらいい?

こんにちは。行政書士の野口です。

今回は相続に関して、相続人自身が全く知らないところから相続人となる場合をご紹介します。

このケースは相続の中でも比較的よくありますので、もしご自身がその立場になった時に参考にしていただければと思います。

それではまず、今回の相続関係からご紹介します。


今回の相続関係:被相続人が叔父の場合

被相続人に配偶者・子・両親がいない場合、兄弟姉妹が相続人となる。

まず今回の相続関係です。上記の表により被相続人(死亡者)が叔父であり、Aが本人となります。

一般的な法定相続の場合、相続人の順位は①配偶者 ②子 ③両親 ④兄弟姉妹の順となります。また補足として、②子と④兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、それぞれの子が相続人となります。これを『代襲相続』といいます。この知識をふまえてもう一度相続関係を見ていきます。

被相続人の叔父には配偶者や子はおらず、両親(相続人の祖父母)は既に死亡しています。兄弟姉妹は本人の父親がおりますが既に亡くなっていますので『代襲相続』により本人が相続人となります。


被相続人死亡後の手続き

上記のような場合で相続人となったとしても相続手続きは同じ。

上記の例により本人が相続人となった場合、亡くなった後の手続きを行います。それぞれ手続きの期限が短い手続きとそうでない手続きがありますので、注意して下さい。万一被相続人が遠方であれば、地元の葬儀会社に頼むことのできる手続きもありますので相談されることをお勧めします。

以下は期限が短い手続きの一例です。

  • 親族等への連絡
  • 通夜・葬儀・告別式の手配
  • 死亡診断書の手配
  • 死亡届の提出
  • 火葬許可申請書の提出
  • 年金受給停止の手続き
  • 世帯主変更届
  • 健康保険証・介護保険証の返却・資格喪失届  等

また相続人は、可能であれば相続手続きをする際必要となる相続人自身の戸籍謄本や住民票の写し、印鑑証明書等を事前に用意しておくことをお勧めします。各種手続きがスムーズに行うことができます。


一般的な相続手続きと注意点

遺言書・エンディングノートの有無により相続の負担と時間は変わる。

被相続人の死亡後の手続きがある程度落ち着いたら相続に関する手続きを行います。

こちらも手続き期限があり、死亡後の手続きに比べ猶予はありますが、それぞれの期限を過ぎてしまうと後々問題となることもありますので期限を確認しながら進めて下さい。

相続手続きは色々ありますが、まず『相続財産』と『推定相続人』を確認します。

『相続財産』には大きく二つあり、①積極財産と呼ばれるプラス財産と②消極財産と呼ばれるマイナス財産があります。積極財産は主に預貯金や不動産等、債権となるような財産で、消極財産は借金や不動産の抵当権等、債務となるような財産のことです。この二つの財産を合わせたものが『相続財産』となります。積極財産が多ければ相殺することができますが、消極財産が多い場合、相続人は消極財産の超過分の債務を負うことになります。『相続財産』を確認する際は十分に注意が必要です。

『推定相続人』とは、被相続人の相続人となるであろう相続人のことです。今回の場合、本人のみとなりますが、それでも必ず被相続人の戸籍謄本等を確認しする必要があります。例えば、養子縁組をしていたり、結婚はしていないが、子を認知している場合など戸籍謄本を確認しなければわからない場合があるからです。特に今回のように遠い親戚から相続する場合、実は本人が相続人ではない場合もありますので十分確認をお願いします。

次に、被相続人の遺書又はエンディングノートの有無を確認します。

遺言書の保管方法はいくつかありますのでそれぞれ確認することをお勧めします。

  1. 自宅を確認
  2. 法務局へ確認
  3. 公証役場へ確認
  4. その他

①自宅を確認:自宅に遺言書がないかを確認します。この時に注意しなければならないのは、遺言書を見つけた時、絶対に開封せず保管して下さい。なぜなら家庭裁判所で検認してもらわなければならないからです。

②法務局へ確認:遺言書に関する法改正により『自筆証書遺言』の保管を法務局ができるようになりました。手続きの費用が安価のため今後利用者は増加すると考えられています。こちらの場合、法務局へ被相続人の『自筆証書遺言』の有無を確認することができ、保管されていた場合、遺言書保管事実証明書等を交付してもらうことができます。また、法務局で保管されている場合①のような検認は不要です。

③公証役場へ確認:『公正証書遺言』が作成されている場合、公証役場へ確認することができます。そのほか『公正証書遺言』を作成した際、その遺言書の謄本等を遺言者本人や証人が保管している場合もありますのでそちらで確認することもできます。また『公正証書遺言』の場合も検認は不要です。

④その他:被相続人の自宅から行政書士や司法書士、税理士、弁護士、金融機関等の封筒や名刺等を見つけた場合、それらへ連絡を入れてみるのも一つです。『公正証書遺言』の証人等となっている場合などがあります。

エンディングノートは、ご自宅もしくは貸金庫などに保管していることが多いのでそのあたりを確認します。

遺言書等があった場合

遺言書等があった場合、検認等を行い遺言書に従い相続財産を相続します。ここで注意することがあります。それは『遺留分』です。『遺留分』とは、遺言書で書かれていたとしても残された相続人の生活等を考え、最低限の割合で相続財産を請求できる権利のことです。

例えば、相続人が複数いる場合で、一人の相続人が遺言書によりすべての財産を単独相続することとなった場合、ほかの相続人は単独相続した者に対して『遺留分侵害額請求権』により『遺留分』を請求することができます。『遺留分』の割合は法定相続分の1/2を限度に請求できます。また請求できる者は、兄弟姉妹を除く相続人のみとなります。そして、請求可能期間は相続開始を知った時等から1年以内ですので注意が必要です。

〇遺言書等がなかった場合

遺言書がなかった場合、単独で相続する場合は紛争となることはありませんが、相続人が複数いる場合『遺産分割協議』により相続人の話し合いで遺産を分割します。この場合、当事者のみで話し合うと紛争となりやすいので、行政書士など、中立に話ができる者をいれることをお勧めします。

〇相続財産を相続する手続きをする。

相続財産が決まれば、相続手続きへ進みます。銀行などの預貯金は銀行へ所定の書類を提出し、不動産等は、法務局へ登記変更手続き等を行います。


農地を相続した場合の注意点

動産登記の確認とあわせて『農地台帳』確認をお勧めします。

最後に、農地を相続した場合の注意点をご紹介します。

不動産の多くは登記簿によりその不動産の所有者等を確認することができます。しかし農地は、登記がされていない場合があり、登記簿のみの確認ではわからない場合があります。そのため当所では『農地台帳』を確認することをお勧めしています。『農地台帳』を確認することにより、相続人が知らなかった農地や農地共有者など確認することができます。そのため不動産登記簿のみでなく『農地台帳』の確認をすることをお勧めします。


最後に

今回は、遠い親戚に関する相続についてご紹介致しました。

現在、団塊世代の高齢化・相続税の対象者拡大が進んでおり、これから相続問題はより日常的になると考えられます。そのため相続は他人事ではなく自分自身のことと考え、事前に準備することも必要です。

今回はここまでです。ありがとうございました。